さりはま書房徒然日誌2024年7月13日(土)

丸山健二『千日の瑠璃 終結3』五月一日を読む

ー粒子にロマンを感じてー

昨日に続けて「私は粒子だ」で始まる五月一日について。
以下引用文2箇所。粒子の無機的な動きに感情を重ね、この世の在り方、人間の運命について想いを馳せる文を読んでいるうちに、「粒子」という感情のない存在から叙情が響いてくる。
その旋律に耳を傾けていると、自分のいる普段の世界が別の空間に思えてくる……。
『千日の瑠璃』の中でも好きな箇所である。

思えば私は若い頃、フランシス・ポンジュの詩とか、無機質な対象を書く詩が好きだった。その名残が今もあるのかもしれない。

私は粒子だ、

   その辺のどこにでも無限に存在して
      現れたり滅したりをくり返しながら
         気随気ままに飛び交っている
            落ち着きのない原子核を成す粒子だ。


我ながら惚れ惚れするほど美しい放物線を描いたり
   有頂天になるほど完璧な渦をもたらしたりしながら
      何処からともなくやってきては
         また何処へともなく去って行く私は、

光と闇の配分が絶妙な
   整然たるこの宇宙をしかと組成する源であり
      重力及び時の流れを制御する支配層であり
         存在の存在たる所以を解く唯一の鍵である。


(丸山健二『千日の瑠璃 終結3』50ページ) 

動くことこそが私の本質であり
   核心であり
      創造主に課せられた使命そのものであり、

絶え間ない動きは
   大小さまざまな変化を生み出し、

      
   変化は誕生と死滅を差し招き、

   生と死は互いに申し合わせ
      手を取り合って
         回転運動に興じる。


(丸山健二『千日の瑠璃 終結3』52ページ)

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