丸山健二『千日の瑠璃 終結3』五月二十三日を読む
ーどこか童話的な世界ー
五月二十三日は「私は雷だ」で始まる。
以下引用文。不自由な少年・世一が住む丘に狙いをつけた雷だが、予想に反してオオルリも、世一もただならぬ喜び様となる。
世一とオオルリの雷に喜ぶ様子を読んでいると、「千日の瑠璃」はどこか童話めいたところもあるように思えてくる。
普通ならば間違いなく火の手が上がるはずなのに
意外にもそうはならず、
しかも
その家で飼っているオオルリなどは
却って喜悦のさえずりを発して
声の調子を一段と高め、
飼い主の少年に至っては
私に向かって手を振る始末だ。
(丸山健二『千日の瑠璃 終結3』139頁)