さりはま書房徒然日誌2024年7月28日(日)

丸山健二『千日の瑠璃 終結3』六月一日を読む

ー世一の心とはほど遠いところにー

六月一日は「私は緑野だ」で始まる。
以下引用文。
世一の眼前に広がる「緑野」。
その「緑野」を眺める世一の心。
両者の心持ちとは遠いところにいる自分自身に気がつく。私は「それがどうしたなどと憎まれ口を叩く鳥」なのだなあと思い、ふと悲しみを覚える。

私にしても
   はたまた世一にしても
      ひたすら自分自身でしかあり得ないものを探し求め、

      偽りの生を本物の生から区別し
         真理に至る近道を通り
            幸運の星に恵まれたものと思いこみ
               美しい時代をくぐり抜けているものと信じこみ、

               だからこそ
                  おのれの寿命を数えたりせず、

                  それがどうしたなどと
                     憎まれ口を叩く鳥は
                        一羽もいない。


(丸山健二『千日の瑠璃 終結3』177頁)  

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