丸山健二『千日の瑠璃 終結3』六月四日を読む
ー童話的な世界ー
六月四日は「私は春月だ」で始まる。「春月」だけが知る「まほろ町に厭な出来事がひとつもなく」という珍しい日。
以下引用文。そんな稀なる日を語る「春月」の口調には、どこか童話めいたものがある。『千日の瑠璃』は大人のための童話なのかもしれない、と読んでいて思うときがよくある。なかなかこんな風に過ごし難いのが人間なのかもしれないが、心に刻んでおきたい言葉である。
まほろ町に住する人々は皆
休日のきょう一日
それぞれ分に応じた暮らしを送り、
身知らずな考えを持たず
無計画な行動に走らず
この世に存することの意義を裏切らず、
そしてそのことをよしとして
いつもより多く笑った。
(丸山健二『千日の瑠璃 終結3』189頁)