さりはま書房徒然日誌2024年8月6日(火)

丸山健二『千日の瑠璃 終結3』六月八日を読む

ー葡萄酒が曝け出す元教授のねじくれた心ー

六月八日は「私は葡萄酒だ」で始まる。湖畔の別荘地に住む元大学教授によって、ボートからロープに結えられ湖の水で冷やされた葡萄酒が語る。

以下引用文。葡萄酒はボートに引き上げられ、グラスに注がれ、元大学教授にちびちび飲まれ始める。
葡萄酒を湖の水で冷やすという山国らしい風景が一転するのは、葡萄酒が元教授のちっぽけな存在を語りだすあたりから。元教授の心に巣食う偏見を暴いていく……という静かなる葡萄酒の反乱に心惹かれる。

その間
   ボートは波と風のまにまに漂い
      彼の余生もまた然りというわけだ。

博聞で通っている彼のような者にとって
   私は単なる酒ではなく、

つまり
   アルコール分のほかに
      知性やら情熱やら文化やら歴史やらまでもが溶けこんでいると
         そう信じており、


確信することによって
   日本酒にはそうしたものが
      ほんの僅かしか含まれていないと
         勝手に決めつける。

(丸山健二『千日の瑠璃 終結3』201頁)

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