さりはま書房徒然日誌2024年8月16日(金)

丸山健二『千日の瑠璃 終結3』六月二十三日を読む

=抽象的な世界から具体的な世界へ、万華鏡の変化ー

六月二十三日は「私は万華鏡だ」で始まる。
以下引用文。少年・世一がオオルリの抜けた羽やら混ぜて作ったお手製の万華鏡が、世一に見せてやる世界。最初はどこか抽象的な、救い難い世界が示される。

来世の門辺に茫然と佇んで
   さっぱり要領を得ない返事を反復するばかりの
      八百万の無能な神々と、

徒にうろたえて騒ぎ立てるしか能がない
   無様にして憐れな人間どもと、

簇生する筍のごとく逞しい日々の
   予測を許さぬ前途と、


果てしない闘争と逃走の連鎖でしかない
   意味不明の世界を垣間見せてやった。

(丸山健二『千日の瑠璃 終結3』263頁)

以下引用文。これまでの抽象的な世界とは真逆の、具体的な事象を万華鏡は見せはじめる。いくつか文が並んでいるが、後半を引用。抽象的な世界から具体性を帯びた世界へ……万華鏡の見え方にはそういう感じがあるのかもしれない。

世界崩壊が迫ってきていることをずばりと予言する
   両性具有の占い師と、

その他多くの人畜が抱えこんでいる
   どうしようもない苦悩のあれこれを、

なんとも鮮やかに
   そしてグロテスクに形象化してみせた。


(丸山健二『千日の瑠璃 終結3』264頁)

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