丸山健二『千日の瑠璃 終結3』六月二十三日を読む
=抽象的な世界から具体的な世界へ、万華鏡の変化ー
六月二十三日は「私は万華鏡だ」で始まる。
以下引用文。少年・世一がオオルリの抜けた羽やら混ぜて作ったお手製の万華鏡が、世一に見せてやる世界。最初はどこか抽象的な、救い難い世界が示される。
来世の門辺に茫然と佇んで
さっぱり要領を得ない返事を反復するばかりの
八百万の無能な神々と、
徒にうろたえて騒ぎ立てるしか能がない
無様にして憐れな人間どもと、
簇生する筍のごとく逞しい日々の
予測を許さぬ前途と、
果てしない闘争と逃走の連鎖でしかない
意味不明の世界を垣間見せてやった。
(丸山健二『千日の瑠璃 終結3』263頁)
以下引用文。これまでの抽象的な世界とは真逆の、具体的な事象を万華鏡は見せはじめる。いくつか文が並んでいるが、後半を引用。抽象的な世界から具体性を帯びた世界へ……万華鏡の見え方にはそういう感じがあるのかもしれない。
世界崩壊が迫ってきていることをずばりと予言する
両性具有の占い師と、
その他多くの人畜が抱えこんでいる
どうしようもない苦悩のあれこれを、
なんとも鮮やかに
そしてグロテスクに形象化してみせた。
(丸山健二『千日の瑠璃 終結3』264頁)