丸山健二『千日の瑠璃 終結3』六月二十八日を読む
ー弱い存在に光をあててー
六月二十八日は「私は嗅覚だ」で始まる。「光を知らぬおかげで闇を知らなくて済む盲目の少女」の嗅覚が語る。
以下引用文。「千日の瑠璃」には人間に対する容赦ない視点もあるけれど、一方で盲目の少女や少年世一という本来なら救い難い存在に、「根拠なき希望」「晴れやかな微笑」と希望の光をたっぷり見い出しているところが魅力のように思う。
私は大抵の物ならばほぼ正確に捉えることが可能で
たとえば
こっちへ向かって吹いてくる潮風と
その切ない風を受けてやってくる少年世一を捉え、
彼がもっと接近すると
その胸をいっぱいに轟かせている
根拠なき希望をも捉えることができ、
さらには
満面を覆う
晴れやかな微笑をも捉えられる。
(丸山健二『千日の瑠璃 終結3』282頁)