さりはま書房徒然日誌2024年8月19日(月)

丸山健二『千日の瑠璃 終結3』六月二十八日を読む

ー弱い存在に光をあててー

六月二十八日は「私は嗅覚だ」で始まる。「光を知らぬおかげで闇を知らなくて済む盲目の少女」の嗅覚が語る。

以下引用文。「千日の瑠璃」には人間に対する容赦ない視点もあるけれど、一方で盲目の少女や少年世一という本来なら救い難い存在に、「根拠なき希望」「晴れやかな微笑」と希望の光をたっぷり見い出しているところが魅力のように思う。

私は大抵の物ならばほぼ正確に捉えることが可能で
   たとえば
      こっちへ向かって吹いてくる潮風と
         その切ない風を受けてやってくる少年世一を捉え、

彼がもっと接近すると
   その胸をいっぱいに轟かせている
      根拠なき希望をも捉えることができ、

さらには
   満面を覆う
      晴れやかな微笑をも捉えられる。


(丸山健二『千日の瑠璃 終結3』282頁)

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