丸山健二『千日の瑠璃 終結3』六月三十日を読む
ー世の人が振り向きもしないところに美は宿るー
六月三十日は「私は色彩だ」で始まる。「花屋の裏手のゴミ捨て場に まったくもって無作為にちりばめられている 頽廃的にして幻想的な色彩」が語る。
「現代美術の最先端を走っている」というゴミの描写も、本当に現代美術の展示会さながらで読んでいて楽しい。
以下引用文。「難病の反動によるものか 殊のほか色感豊かな少年」である世一は、ゴミの美を完全なものにしようと夢中になるが合点がどうしてもゆかない。ゴミの「色彩」が説明するその理由が、なんとも思いがけない。
世の人が見ようともしないところに、美を感じとる眼差しが心に響く。
それでも納得がゆかないのか
しまいには私のなかでのた打ち回り始めたというのに
まだまだ不満の様子で、
尤も作品としての自分に言わせてもらえば
彼はおのれを色のひとつとして見ることを忘れており、
飛び入り参加してくれたおかげで
非の打ちどころがない美に到達できたのだ。
(丸山健二『千日の瑠璃 終結3』203頁)