丸山健二『千日の瑠璃 終結3』七月五日を読む
ー転換の鮮やかさー
七月五日は「私は雨音だ」で始まる。
以下引用文。このあと、雨の陰惨さが人々に及ぼす影響が雨音が打ちつけるように幾つも列挙される。だが最後にオオルリが登場して、負の光景から陽に変えるところが鮮やかだなあと思う。
すでにして二十時間余りも間断なくつづき
まほろ町の人々の胸にぶつぶつと穴を開ける
無情にして有害な雨音だ。
(丸山健二『千日の瑠璃 終結3』310頁)
以下引用文。「私の意のままにならず」と雨に嘆かせるオオルリが登場する場面である。生と死が隣り合わせているような囀りが聞こえてきそうである。
この私が
まほろ町の隅々に沁みこませる陰の力を
悉く吸い取って陽の力に変換し、
なんと
生を死に見立ててしまうほどの
華麗なさえずりを
惜しげもなくばら撒く。
(丸山健二『千日の瑠璃 終結3』312頁)