さりはま書房徒然日誌2024年9月5日(木)

丸山健二『千日の瑠璃 終結3』七月二十八日を読む

ー抽象的なものを語り手にする効果ー

七月二十八日は「私は救済だ」で始まる。世一の飼い鳥のオオルリが「神に入るさえずりの妙技で遠回しに示す かなりの気高さを秘めた」救済が語る。
以下引用文。救済が叫べど、まほろ町の人々の反応は冷ややか。
「救済」という抽象的なものを語り手にすると、作者の素顔がストレートに出てくる感じがした。
他の人の視点に降り立って、その人の一人称で語るときは作者はあまり見えないものだけれど。
作者自身の考えをストレートに、でも若干弱めて伝えるには「救済」という抽象的な語り手もいいのかもしれない……などと考えた。

けれども
   そうしたかれらのそうした冷ややかな反応こそが
      実は私が最もこいねがうところのものであり、

ひっきょう
   私の詭弁に酔い痴れ
      私が授けるお情けにすがっているあいだは
         ぐずぐずになった精神世界が救われることなど

            絶対にあり得ない話で、

かれらを救えるのは
   かれら自身を措いておらず、

神仏なんぞは論外であって
   頼ったその段階で
      魂は即死を迎えてしまう。


(丸山健二『千日の瑠璃 終結3』5頁)

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