丸山健二『千日の瑠璃 終結4』八月五日を読む
ー体験が滲む文ー
八月五日は「私は大鎌だ」で始まる。「食べて眠るだけの生活」にも、「そのときの気分で踊るアドリブのダンス」にも飽きた青年が、新しい職を求めていくなかで出会った下草刈り用の大鎌が語る。
丸山先生の田舎暮らしと作庭の体験から出てくる言葉が、意識してなのか無意識になのか定かではないが、渦巻いているような文だと思った。
たちまちにしてコツを呑みこむと
同僚の誰にも負けぬ勢いで
私をブンブン振り回し、
クマザサを薙ぎ払い
派手な色合いの蛇の頭をすっぱりと刎ね
小石にぶつかるたびに火花を飛ばし、
そのついでと言ってはなんだが
思い出したくもない過去と
汗といっしょに断ち切った。
(丸山健二『千日の瑠璃 終結4』35頁)