丸山健二『千日の瑠璃 終結4』八月八日を読む
ー若者の不安と光が一体となってー
八月八日は「私はピラミッドだ」で始まる。少年世一がそれが何なのかも分からず、海外旅行のパンフレットを見たことも忘れ、ただ無心に作り上げたピラミッド。湖畔の砂でできた、少年がよじ登ることのできる大きさである。
以下引用文。湖畔でキャンプする若者たちがピラミッドを眺める様子。
「光と光の僅かな隙間にちらついている さほど明るくない未来」という言葉に、湖畔の風景と若者の不安と希望がないまぜになった心が見える気がする。
「直線的で相対的な私」の「相対的」の意味、何だか受験の国語の問題に出てきそうだけれど、どういう意味なのだろうと考えてしまう。
かれらは
ひと泳ぎしては浜辺に寝そべって甲羅を干し、
光と光の僅かな隙間にちらついている
さほど明るくはない未来を垣間見るたびに顔を背け
不安でいっぱいになった目を
今度は世一と私に向けるのだ。
そんなかれらはおそらく
極めて曲線的な動きをする少年が
直線的で相対的な私を造り上げたことに魅了されており、
(丸山健二『千日の瑠璃 終結4』48頁)