丸山健二『千日の瑠璃 終結4』八月九日を読む
ーまさに夏の昼下がりー
八月九日は「私は昼下がりだ」で始まる。フェーン現象のせいで暑くなった日の昼下がりが語る。夏の昼下がりとはまさにこんな感じ、気怠さと勢いを増す自然がコントラストを描いて心に残る。
まほろ町をすっぽりと包みこんだ私は
午睡をする人の数をいつもの倍に増やして
街道の交通量をいつもの半分に減らし、
ついでに
底意や小策の数も大幅に少なくしてやり、
そして
ひたすらきらめくうたかた湖と
その周辺の屈折した光景を
さながら油絵のように塗り固め
押し固めてやり
夏場だけ開店する湖上のレストランを
夢うつつへと限りなく近づける。
(丸山健二『千日の瑠璃 終結4』50頁)