丸山健二『千日の瑠璃 終結4』八月十四日を読む
ー「調子のいい韻律」という言葉の面白さー
八月十四日は「私はトモロコシだ」で始まる。力仕事を終えた若者が、畑から家畜用の実の少ないトウモロコシを畑からもぎ取ってきて火にくべる場面である。「調子のいい韻律」という言葉が、火の爆ぜる音、若者の骨格の見える痩せた体と重なるようで面白いと思った。
待ちきれない彼は
まだぱちぱちと爆ぜている生焼けの私にかぶりつき
さも美味そうにむしゃむしゃと貪りながら、
かなり傾いたとはいえ
まだまだ荒くれている夏の太陽を前にして
皮下脂肪のかけらもない手足や胴や頭に
調子のいい韻律を与えた。
(丸山健二『千日の瑠璃 終結4』72ページ)