さりはま書房徒然日誌2024年9月18日(水)

丸山健二『千日の瑠璃 終結4』八月十五日を読む

ー実体のない語り手の存在を感じさせるにはー

八月十五日は「私は説明だ」で始まる。「少年世一が盲目の少女を相手にだらだらとくり返す 実意を込めた 懸命の説明」が、盲目の少女にオオルリとはどんなものなのか説明しようとする。
鉛筆や牛乳ならともかく「説明」が語る……というのはハードルが高いのかもしれない。だからだろうか?八月十五日の文は具体的に見えるように進み、丸山先生にしては珍しく世一と少女の会話まである。これも「説明」という実体のない語り手に、骨と肉を与えようとしているからではないだろうか?

むしろ見えないことによって培われた想像力が
   存分に働き、

   おかげで私は
      本物を凌駕するかもしれない青い鳥を
         ものの見事に
            いまだ光を知らぬ胸のうちに飛ばしてやれ、

            「どう、わかったあ?」と
                そう訊く世一の声に濁りはなく、

            「わかったあ」と答えて深々と頷く
                相手の笑みは至上のものだ。


(丸山健二『千日の瑠璃 終結4』76ページ)

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