さりはま書房徒然日誌2024年9月25日(水)

丸山健二『千日の瑠璃 終結4』八月二十四日を読む

ーこんな鋭いベッドに寝かされたらー

八月二十四日は「私はベッドだ」で始まる。「少年世一のこの上なく貧しい体と この上なく豊かな魂をしっかりと支えて止まぬ 町立病院のくたびれ果てた」ベッドが語る。
以下引用文。ベッドが語る世一の容体は「現世が翳り」「時空間の歪み」と抽象的な言葉を使っているのに、不思議と世一の苦しそうな姿が浮かんでくる。

この患者のほうが
   一日くらい早く死んでしまう可能性は濃厚で、

   昏睡状態に陥った世一の周辺は
      現世が翳りを見せ、

      そこだけ時空間の歪みが
         はっきりと見て取れた。


(丸山健二『千日の瑠璃 終結4』111頁)

以下引用文。悲しみつつ、何かと理由をつけて世一のそばを離れていく医者や看護師、家族の心境をユーモラスに、皮肉を込めてベッドは語る。こんなベッドに寝かされたら、一日でも早く退院したくなりそうだ。

例によって厄介な患者が私に押しつけられたものの
   それはいつものことで
      この場合だけが特殊な状況というわけではなく、

      死からまだ離れている生者たちとしては
         こうした場面から逸早く逃れたいだけなのだ。

(丸山健二『千日の瑠璃 終結4』113頁)

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