丸山健二『千日の瑠璃 終結4』九月三日を読む
ー自然と共にある生活感ー
(↑ カエデの黄葉。赤く紅葉するカエデもあるみたいだけど、たまたま黄色の黄葉に)
九月三日は「私はカエデだ」と世一の家の「星の形の葉をいっぱいに付けたカエデ」が籠に入れたオオルリと一緒に木に登ってきた世一のことを語る。
「星の形をいっぱいに付けたカエデ」という表現にも、以下引用文にも丸山先生の自然に向ける眼差し、その中で生を紡いでいらっしゃるのだなあ……と著者の生活感覚が滲んでくる素敵な文のように思った。
そしてオオルリと共に
私の上で食べ
私の上で飲み
私の上で唄い
私の上で排泄し
私の上でこの世を満喫する。
そんな私たちの上空を
夏を惜しむ白い雲が流れて行き
充足の季節を心ゆくまで謳歌した鳥たちが
黙したまま渡って行き
生きとし生けるものすべての運命を司る時間が
さりげなく移って行く。
(丸山健二『千日の瑠璃 終結4』152ページ)