神奈川県立図書館ボランティア朗読会「秋といえば……」へ
神奈川県立図書館Lib活1期生の方々が二年かけて積み重ねてこられた朗読の学びを発表するボランティア朗読会、今回は1期生の活動の最後となる卒業発表だそうだ。楽しみなような、寂しいような心持ちで紅葉坂の急な坂を登る。
活動の様子を拝見していると、Lib活の皆さんもこの急な坂を足繁く登り、朗読の練習をされたり、朗読会に向けて企画をされたりしていたようである。暑い日、雨の日は大変だったろう……と思いつつ、座れそうな場所を見つけては休み休み紅葉坂を登る。
今回のテーマは「秋といえば……」で、朗読者其々が秋に因んだ作品を選び朗読して下さった。中には懐かしい作品もあれば、知らない作品もあって、朗読を聴きながら「読んでみたいな」と思う。
今回、朗読して頂いた作品。
・『としょかんライオン』ミシェル・ヌードセン
・『アガワ家の危ない食卓』『風々録その後』より「混沌の秘境」阿川佐知子
・『日本の文学34 内田百閒・牧野信一・稲垣足穂』より「件(くだん)」
・『ごくらくちんみ』より「ぎんなん」杉浦日向子
・『校訂 新美南吉全集第十巻』より「権狐 赤い鳥に投ず」新美南吉
↓写真はプログラムより。朗読者よりのひとことも興味深い。
拝聴しながら思ったのは、それぞれの方の声や読み方の個性と作品世界の特徴がぴったりマッチして、一体化しているということ。「秋といえば……」というテーマで、各人が思い入れのある作品を朗読してくださったからなのだろう。
たとえば、『アガワ家の危ない食卓』「混沌の秘境」の朗読では、まさに混沌の秘境と化した実家の冷蔵庫を片そうとする娘と母のユーモラスなやり取りが、娘の冷蔵庫の様子へのかすかな嫌悪感やら驚き、母親の少し言い訳するようなトーンの朗読によって生き生きと浮かんできた。
もしかしたら朗読者の方の、自分の母親を気遣う気持ちも滲んでいるのでは……と思うほど情のこもった朗読だった。
冷蔵庫の様子に、娘が自分のバッグの様子を重ね、思わず発する嫌悪の言葉が、聞き手の私の心にも刺さってくる。「私もカバンの中を片さないと……」
朗読者を介して、見知らぬ大勢の人たちと作品世界を共有できたひとときのおかげか、紅葉坂のまだ青い紅葉の葉のトンネルが清々しい。帰りは足取り軽く坂を下った。
素晴らしいときをつくってくださった朗読者の方々、神奈川県立図書館に感謝!
またどこかでこのメンバーの朗読に再会する機会がありますように!