丸山健二『千日の瑠璃 終結4』十月五日を読む
ー素朴な美しい言葉ー
十月五日は「私は奢りだ」で始まる。少年世一の、盲目の少女と彼女の飼い犬への奢りが語る。
以下引用文。「ただ青いだけ」という世一の言葉も、「おもむろに天と地を示した」という終わり方も、理解を超えた美しい何かをあらわしているような気がする。
少女がほっそりした指で沖の方を示すと
すかさず世一は
「ただ青いだけ」と的確な答えを提示し、
少女と犬と母親が軽自動車で去ったあと
世一は震える二本の人差し指を用いて
おもむろに天と地を示した。
(丸山健二『千日の瑠璃 終結4』281頁)