さりはま書房徒然日誌2024年10月25日(金)

丸山健二『千日の瑠璃 終結4』十月五日を読む

ー素朴な美しい言葉ー

十月五日は「私は奢りだ」で始まる。少年世一の、盲目の少女と彼女の飼い犬への奢りが語る。
以下引用文。「ただ青いだけ」という世一の言葉も、「おもむろに天と地を示した」という終わり方も、理解を超えた美しい何かをあらわしているような気がする。

少女がほっそりした指で沖の方を示すと
   すかさず世一は
      「ただ青いだけ」と的確な答えを提示し、

少女と犬と母親が軽自動車で去ったあと
   世一は震える二本の人差し指を用いて
      おもむろに天と地を示した。

(丸山健二『千日の瑠璃 終結4』281頁)

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