丸山健二『千日の瑠璃 終結4』十月六日を読む
ーキツツキのドラミングが意識に働きかけるー
十月六日は「私はキツツキだ」で始まる。キツツキがうたかた町の人間模様を語る。
以下引用文。日頃キツツキを眺めて暮らしている丸山先生らしい文だと思った。
才覚以上の山気に富んだ男は
私が鞭打ち症にならない謎を解き明かし
画期的なヘルメットを発明してひと儲けを企み、
(丸山健二『千日の瑠璃 終結4』282頁)
キツツキのドラミングが契機となって、様々な人間達が色々な思いや過去を連想していく有様が面白い。確かにキツツキの鋭い連打は意識を揺さぶるものがあるのかもしれない。
一兵卒として大陸へ送られ
命じられるままに暴虐の限りを尽くしたことを
今でも戦功と固く信じてやまぬ男は
私が立てる音から重機関銃を連想して
全身の血を大いに沸かせる。
(丸山健二『千日の瑠璃 終結4』283頁)