さりはま書房徒然日誌2024年10月30日(水)

丸山健二『千日の瑠璃 終結4』十月七日を読む

ー最期の瞬間に垣間見る緑の火ー

私は火だ、

不幸にして生後日ならずしてあっさり死んでしまった嬰児が
   短い滞在期間であったこの世を離れる
      その最期の瞬間に垣間見た
         緑がかった火だ。

(丸山健二『千日の瑠璃 終結4』286ページ)

私の父は亡くなる前日だったろうか、病院の個室の白い壁を見て「綺麗な緑の光だなあ」と晴明な意識の中で言い、何も見えていない私の様子に悟った顔をした。
あのとき父が見た緑の光とは薬の副作用なのか、あるいは彼岸の世界が見えていたのだろうか……。
それとも丸山先生が「そして私は 周辺の森や林で造られた酸素を 精根込めていっぱいに摂りこみ」と書かれているように、現実世界が父を送り出そうと見せてくれた火だったのだろうか。
いずれにしても、この世を去る直前、私には見えない、なんとも美しい緑の光に心打たれていた父の顔の安らかさ、純真さをふと思い出した。

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