さりはま書房徒然日誌2024年11月2日(土)

丸山健二『言の葉便り 花便り 北アルプスの山麓から』(田畑書店)「何はともあれ、生きてみようか」を読む

ーお見舞いにもよいし、エッセイの書き方を学ぶにもよい本ー

『言の葉便り 花便り 北アルプスの山麓から』の目次を眺めていると、なんとも前向きになれそうな言葉が並んでいる。一章あたりの長さといい、前向きな章題といい、病院に入院している人へのお見舞いにもよさそうな本である。

大町の庭の自然に人生をかぶせ、長野の風景から思いを語る本書は、今時の日本の作家には珍しく哲学とユーモアが溶け合って、エッセイの醍醐味に満ちている。


四季も自然も失われつつあり、国語教育でも実用的な文書が重んじられる昨今、こういう深くて軽妙なエッセイに触れる機会が少なくなったのでは?


エッセイを書いてみたい方にとっても、本書は良い指針になるのでは無いだろうか?

そしてこの冬もまた、厳寒に閉ざされたがために発生した御神渡りよろしく、魂の湖面を人間的にして文学的な言葉が突き破って飛び出しました。創作活動を止められない所以が、きっとここにあるのでしょう。

(丸山健二『言の葉便り 花便り 北アルプスの山麓から』10ページ)

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