丸山健二『千日の瑠璃 終結4』より十月二十八日「私は棘だ」を読む
十月二十八日は「私は棘だ」と、バラの棘が世一の母を語る。
私は棘だ、
枯れた花を見下しがちな世一の母親の人差し指の腹を突き刺すことにより
バラとしての威厳を保とうとする
針のように鋭い棘だ。
(丸山健二『千日の瑠璃 終結4』170ページ)
「千日の瑠璃」でバラが出てきたのは、このページが最初だったのではないだろうか。
バラの庭をつくってきた丸山先生が、まず最初に棘に語らせるとは!たぶん手入れをされながら、散々棘に刺されてきたのではないだろうか?
その棘にも「バラとしての威厳を保とうとする」と見るあたりに、バラへの深い愛情を感じてしまう。