丸山健二『千日の瑠璃 終結4』より十月二十二日「私は教室だ」を読む。
十月二十二日は「私は教室だ」と教室が語る。
まず冒頭の教室の様子や場所を語る「なんとも古びた木造校舎の あやまち川に最も近い教室だ」という言葉に、丸山先生から見た教育の危ない有り様が端的に語られていると思う。
以下引用文。そんな教室の中で育てられる子供たちの姿。これは今も変わらないのだろう。だから不登校の生徒が年々増えてきているのかも、真っ当な感覚の持ち主なら耐え難いものがあるのかも、と思った。
これまで私が仕立て上げてきたのは
お上の後ろ盾を得たときのみ屈強になり
果断な行動に出る
ロボット的な兵士と
教唆煽動や威嚇に弱い腰抜けの国民のみで
(丸山健二『千日の瑠璃 終結4』348ページ)
以下引用文。深夜の教室に少年・世一が忍び込んで、教師役、生徒役を演じる。生徒の言葉に丸山先生が理想とする思いが滲んでいるように思う。
教師は黒板にオオルリの絵を描いて
「ぼくはこの鳥に従うが、きみはどうかね?」と
そう尋ね、
すかさず生徒は
「従わせようとしない者に従う」と
そうきっぱり答え、
授業はそれきり終了し
あとに残されたのは
自立の精神の余韻と
自由の息吹だ。
(丸山健二『千日の瑠璃 終結4』349ページ)