丸山健二『千日の瑠璃 終結5』より十一月十二日「私は観菊会だ」を読む
まほろ町の観菊会に来ても、菊はそっちのけで飲み食いに夢中になる年寄りの見苦しい一行。その有り様を擬音語を使って強調、菊人形にまで反映している文が面白いなあと読む。
がつがつ食べ
がぶがぶ飲み
ずるずるすすりこむ音が
私の雰囲気をいっぺんでぶち壊し、
一番繊細な種類などは
花弁を散らせてしまうありさまで、
菊人形の大半がその上品な顔を曇らせた。
丸山健二『千日の瑠璃 終結5』32ページ
私は、観菊会の菊はあまりに作り込まれた感じがして好きではない。でも苦心して作られた不自然な菊も、それをいっぺんでぶち壊す老人も、どっちも自然な美しさとはかけ離れている点ではどっちもどっちだろうか。