丸山健二『千日の瑠璃 終結5』より十一月十三日「私は自転だ」を読む
十一月十三日は「私は自転だ」と少年世一を軸にした自転が語る。
「夜と思えば夜」「昼と決めれば昼」「早くもなり遅くもなり」と自転をつかさどる世一。
思うようにならないことが多い世だけれど、言葉を使い考えるときだけは、私たちも世一のように自転をつかさどって、時まで支配することができるのかもしれない。
それこそが言葉を使う意味であり、文学の役割であるのかもしれない。
少年世一を軸に
人知れず
人物のたぐいにも知られずに
密かに回っている
まほろ町の自転だ。
私には周期というものはなく
世一が夜と思えば夜
世一が昼と決めればそこには昼が存在し、
彼の望み次第
好み次第によって
私は速くも遅くもなり
ときには完全に停止することさえあり、
しかしながらその認識は
生死のいずれも関知しない彼には
見事なまでに欠落している。
丸山健二『千日の瑠璃 終結5』34ページ