さりはま書房徒然日誌2025年1月7日(火)

丸山健二『千日の瑠璃 終結5』より十二月五日「私は木枯らしだ」を読む

十二月五日は「私は木枯らしだ」と、「木枯らし」が語る。

以下引用文。
木枯らしが吹きつけるまほろ町の胡散臭い様子も、そこで暮らす人々のギスギスした感じも、風の無常感も、こんな風に言えばスッと読み飛ばすことなく、頭に情景を浮かべて、何となく物寂しい心地になるものだと思った。

人々を欺く角度で傾斜した地層の上に横たわる
   この田舎町
      まほろ町を今年もまた訪れた私は
覚醒の教訓を込めた一喝を加えるべく
            ぴゅっと吹きつけ、

世知賢い者たちの気配が
   たっぷり残る名もない通りや、

時運に乗ってちっぽけな成功を収めた連中の
   夢のかけらが落ちている路地を、

できるだけ何も見ないようにして
   すっと走り抜けて行く。

(丸山健二『千日の瑠璃 終結5』122ページ)

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