丸山健二『千日の瑠璃 終結5』より十二月五日「私は木枯らしだ」を読む
十二月五日は「私は木枯らしだ」と、「木枯らし」が語る。
以下引用文。
木枯らしが吹きつけるまほろ町の胡散臭い様子も、そこで暮らす人々のギスギスした感じも、風の無常感も、こんな風に言えばスッと読み飛ばすことなく、頭に情景を浮かべて、何となく物寂しい心地になるものだと思った。
人々を欺く角度で傾斜した地層の上に横たわる
この田舎町
まほろ町を今年もまた訪れた私は
覚醒の教訓を込めた一喝を加えるべく
ぴゅっと吹きつけ、
世知賢い者たちの気配が
たっぷり残る名もない通りや、
時運に乗ってちっぽけな成功を収めた連中の
夢のかけらが落ちている路地を、
できるだけ何も見ないようにして
すっと走り抜けて行く。
(丸山健二『千日の瑠璃 終結5』122ページ)