さりはま書房徒然日誌2025年2月16日(日)

丸山健二『千日の瑠璃 終結5』より一月七日「私は国家だ」を読む

『千日の瑠璃』が最初に刊行されたのは1992年。この欲張りぶりに、まだ当時の日本はよくも悪くも勢いがあったのだなあと思う。

私は国家だ、

今はやまむなく猫をかぶって神妙にし
   平和憲法と民主政治の常道を守ってはいても
      あわよくば皇国にして帝国という立場へ返り咲く機会を
         虎視眈々と狙っている
            性懲りもない国家だ


(丸山健二『千日の瑠璃 終結5』254ページ)

以下引用文。今わたしが生きる日本の社会のようでもある。ただ日本という国も、大国の「ひと睨み」にびくびくしているような気もする。現状は、国家を超える国家に呑み込まれかけているのかもしれない。

不穏な言辞を弄する輩の数は
   時代の潮流に呑みこまれて減りつづけ、

論敵として不足のない者も
   今ではあまり見かけなくなり、

ということは
   いよいよ愚民を束ねて扇動する機械の復活を意味し、

合いの手を入れるようにして
   見識張った意見を吐く者も
      私のひと睨みによって
         たちまち見解の相違という穴蔵へ
            さっさと避難してしまう。


(丸山健二『千日の瑠璃 終結5』254ページ)

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