丸山健二『千日の瑠璃 終結5』より一月九日「私はリスだ」を読む

一月九日「私はリスだ」とリスが語る箇所を読むと、やはり大町の自然の中にいる丸山先生らしい描写だと思う。
「冬はむしろ最も優雅な季節」という発想は、自然とは遠い場所から冬の大町の動物を想像している私には無理である。
春までの食料をたっぷり貯めこんでる私にとって
冬はむしろ最も優雅な季節であり
(丸山健二『千日の瑠璃 終結5』262ページ)
日が落ちて間もなく
雪がもたらす静寂よりも静かに襲ってきた梟に
私は後ろ肢を上手に使った猛烈な反撃を加えて
ものの見事に撃退し、
(丸山健二『千日の瑠璃 終結5』265ページ)
ずいぶんと丁寧なリスの描写に思わず微笑んでしまう。やはり、これも大町に暮らす丸山先生ならでは、だろう。
私がよく行く伊東の街中でもリスを見かけるが、隙あらばパン屋の中に駆け込んでウロチョロするリスの姿は、どちらかというとドブネズミに近い。丸山先生のような視点でリスを眺めていなかったので、新鮮な驚きがあった。
