さりはま書房徒然日誌2025年2月19日(水)

丸山健二『千日の瑠璃 終結5』より一月十五日「私は式典だ」を読む

「もしかすると一生成人できないかもしれない二十歳」の成人式が参加者に向ける視線は冷ややかで皮肉たっぷりである。
今読んでみると、こうした様子は若者だから、ということではないだろう。

『千日の瑠璃』が刊行された1992年の人々の雰囲気をつかんでる気がする。学生運動も失敗に終わり、経済だけが回転している時代。そんな時代に生きる人々の顔が見えてくる。
2025年の今を生きる若者たちはこの時代と違い、あまりにも酷い世の中に向かって懸命に声をあげようとしている……のではないだろうか。

かれらは議論を好まず、
   持論を持たず、
      ときには酒の力を借りて手前勝手な意見を吐露しても
         自己愛に支えられた欲ボケのせいで
            論旨が今ひとつ定まらず、

結局はだんまりの世界に閉じ籠もって
   明日なき今を
      ただ漫然と生きつつ
         世間に調子を合わせているばかりだ。


 (丸山健二『千日の瑠璃 終結5』289ページ)

さりはま について

更新情報はツィッター sarihama_xx で。
カテゴリー: さりはま書房徒然日誌 タグ: , パーマリンク

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

Time limit is exhausted. Please reload the CAPTCHA.