さりはま書房徒然日誌2025年2月22日(土)

佐藤洋一『図説 占領下の東京』

占領下の東京に関する資料はとても少ない。『図説 占領下の東京』の筆者・佐藤洋一氏も本書の中で嘆いている。

その資料の少なさは、意図的なもの……と、以下の黒澤明の師匠・山本喜次郎の言葉で知る。


日本人(に限らないかもしれないが)は自分たちに都合の悪い歴史を忘れてきた。また同時に、アメリカからも同じように記憶しないように仕向けられてきた……のだと本書であらためて知る。


霞ヶ関のリンカーン・センター、永田町のジェファーソン・ハイツ、代々木のワシントン・ハウスをはじめ、都内に無数にあった接収地、そのなかの豊かなアメリカの生活、その外には戦災孤児やら食うのも厳しい日本人。
そんな消されかけている歴史が資料や写真と共につまった労作である。

「ところが、どっこい、焼跡を撮影することは、絶対まかりならぬと来た。占領政策の妨害になるというのである。自分で焼いておきながら、随分、勝手な理屈だと思ったが、しようがない。

「また、ルンペンだとか浮浪児だとか、壕舎生活とかヤミマーケットなぞの、ひどいのは、撮影することが出来ない。要するに『日本が負けたこと』『日本をアメリカが占領していること』の事実を画面に現すことを禁じられたのである。」

(「図説 占領下の東京」110ページ 黒澤明の師匠・山本喜次郎の文)

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