丸山健二『千日の瑠璃 終結5』より一月十日「私は吹雪だ」を読む
少し前に戻って一月十日「私は吹雪だ」の箇所について。
どこか丸山先生を思わせる作家が登場。
でも現実の丸山先生は朝すごい早い時間に起きて(私が寝るくらいの時間らしい)、毎日早朝に執筆されているらしい。「好きでもないのに なぜか執筆行為を止めるに止められない」訳ではない。
「捨て鉢な目」をされている訳でもなく、温かく見守ってくださるような優しい目をされている。いや呆れるのを我慢されているのかもしれない。
「私と対峙する」という思いは、確かにあるのだろう。
先日もオンラインサロンで「雪かき体質になってきた」と言われたくらいだ。雪国・信濃大町の冬は厳しい。
「迷夢を醒ましてくれそうな世一とオオルリ」世一に象徴される弱くも打算とは遠い存在。オオルリに象徴される自然。この二つが、丸山先生の書くエネルギーなのではないだろうか。
黒いむく犬は、昔飼っていたと書かれていた黒いチャウチャウ犬のことだろうか。「捨て鉢な目」が黒いむく犬のおかげで遠くに消えていく気がする。
特に好きでもないのに
なぜか執筆行為を止めるに止められない
どこか捨て鉢な目つきの小説家は、
自宅の方向へ歩を進めてから間もなくして立ち止まるや
私と対峙するかのような
挑発的な態度に切り換え、
付近一帯に
迷夢を醒ましてくれそうな世一とオオルリの
濃厚な気配を察知し、
思いこみがちなすべてを忘れ
濁世の現実を受け容れ
黒いむく犬を連れて帰った。
(丸山健二『千日の瑠璃 終結5』267ページ)
