丸山健二『千日の瑠璃 終結5』より二月四日「私は象だ」を読む
まほろ町の動物園に運ばれてきた高齢の象。
以下引用文。象が見つめる雪のまほろ町は、ただの田舎町ではない。どこかで宇宙ともつながっている存在らしい。そんな象の気持ちに自然と一体化する。
そうしているうちに、象が観察しては語る人々の有り様も、受け入れる気持ちになってくる。
もし、これが人間の視点で語られたら、反発するかもかもしれない人物スケッチなのだが……。
こんなふうに雪に無心になる象の言葉だと、自然に受け入れてしまうではないか。
運動場に降り積もった雪の上に側臥した私は
細い目をさらに細めて
雪といっしょに天から舞い落ちてくる
白色の無限や
透明の永遠などを
ぼんやりと眺め、
そうやって片田舎に身を置きながらも
宇宙の中心で生きることの醍醐味を
存分に満喫していた。
(丸山健二『千日の瑠璃 終結5』366ページ)
