丸山健二『千日の瑠璃 終結5』より二月三日「私は小屋だ」を読む
二月三日は冬の寒さに耐えられなくなった物乞いが、かえらず橋の下に建てた小屋が語る。
小さな小屋のおかげで生まれる束の間の安らぎ。何とも切ないと感じるべきか、それともしんどい状況でも心はこれだけ自由なのだと感じるべきか……迷う。
最後の「表札」で一気に現実に引き戻される。丸山先生は「表札」に何を託そうとして持ってきたのだろうか……表札をかけるその思いは?と表札をかけていない私はふと考えた。
ややあって
温もりの心地よさに眠りへといざなわれ、
不幸ではなかった時代における追憶の断片が
夢となって次々に現れる惰眠を貪り、
夜中に目を覚ますと
今度は
表札なんぞを作り始めた。
(丸山健二『千日の瑠璃 終結5』
