近松門左衛門『冥途の飛脚』より「地獄の上の一足飛び」
山小屋に来るとき、うっかりして『千日の瑠璃』を忘れ、近松門左衛門集1だけを持ってきていた。
なので日誌はお休みしようかと思ったけど、私の心に残る近松の一言を紹介してみることにした。
以下引用文。傾城の梅川を身請けするためにお金を使い込んでしまった忠兵衛。もうバレるのは時間の問題だから、一緒に高飛びしてくれと梅川に頼み込む。
「地獄の上の一足飛び」は「きわめて危険なことのたとえ」
地獄の上の一足【そく】飛び、飛んでたもやとばかりにてすがり。ついて泣きければ。
【現代語訳】「地獄の上を一足飛びに飛ぶつもりで、一緒に高飛びしてくれ」と言うばかりで、すがりついて泣くと
「地獄の上の一足飛び」という無謀さ。「飛んでたもや」という甘ったれ感。「すがり。ついて泣きければ」の情けなさ。
そんなこんなが混沌としたこの文。初めて「冥途の飛脚」を見た時、とても心にも耳にも残った。