さりはま書房徒然日誌2025年5月3日(土)

近松門左衛門『冥途の飛脚』より「比翼煙管」

本を読んで文字で追いかけると印象的なのに、劇場で観たときこんな言葉はあっただろうか……と思うものもある。

「比翼煙管」もその一つ。註によれば「雁首一つ吸口二つの煙管のこと。ここは一本の煙管を二人で代わる代わる吸う睦まじさを表現」とのこと。
この直前に「相合炬燵」【あいやいごたつ】という印象的なフレーズがあるので、そちらに意識が奪われているのだろうか。「比翼煙管」は記憶に残っていない。

「相合炬燵」も、「比翼煙管」も、どちらもなんとなく艶かしい言葉だ。

以下引用文は忠兵衛、梅川の二人が死を覚悟して遊郭を逃げる場面。

これぞ一蓮托生【いちれんたくしょう】と、慰めつ、また慰みに。比翼煙管【ひよくぎせる】の薄けぶり霧も絶え絶え晴れ渡り。むぎの葉生え【はばえ】に風荒れて

【現代語訳】
「この相合駕籠こそ一連托生」と、互いを慰めあい、またわが身野慰みにと比翼煙管で一服やると、その薄煙と共にやがて霧もきれぎれに晴れ渡り、麦の葉にも風が吹き荒れて

麦の葉が出てくるのは冬の頃と知る。「風荒れて」に、なんとも追い詰められた二人の心境が滲む気がする。
近松門左衛門はやたら難しい漢字を使っているのに、「むぎ」と平仮名にしたのには意図があるのだろうか?

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