さりはま書房徒然日誌2025年5月7日(水)

丸山健二『千日の瑠璃 終結6』より三月十九日「私は三月だ」を読む

まほろ町の三月に反応する植物、獣、様々な人間たちの様子が書かれている。中でも前後からするとおそらく世一の姉が宿した、たぶん祝福はされないだろう胎児の想いが鮮烈に印象に残る。

かろうじて人間と分かるほどの肉体に宿る自由への想いが、何とも丸山先生の言葉らしいのではないだろうか。

あげくに
   そろそろ人間でしかあり得ぬ形状を整え始めた
      極めて発育順調な胎児には、

ひとたび子宮の外に飛び出した暁には
   自分でも何をしでかすのか分からないほどの
      あり余る自由と
         あり余る野望を
            嫌というほど付与してやる。


(丸山健二『千日の瑠璃 終結6』141ページ)

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