変わりゆく日本語の風景「しとしと」
今日文楽「芦屋道満大内鑑」を観ていたら「しとしとと歩く」というような詞章があった。
現代では「しとしと」と言えば雨に使われるイメージがある。
江戸時代、「しとしと」を足音に使っていたのだろうかと調べてみた。
以下、日本国語大辞典より「しとしと」の項である。
「しとしと」は足音にも使われていたし、「しとしと」以外にも面白い足音の表現が幾つもあるような印象を受けた。
足音に注意が向くほど、それだけ静かな時代だったせいなのだろうか…と羨ましくもなった。
(1)静かにゆっくりと物事を行なうさま、また、静かに歩くさまを表わす語。しずしず。
*日葡辞書〔1603~04〕「Xitoxito (シトシト)〈訳〉副詞。ものごとをゆっくり整然と行なうさま。例、Xitoxito (シトシト) モノヲ スル〈訳〉ものごとをゆっくり用心して行なう」
*絅斎先生敬斎箴講義〔17C末~18C初〕「重はばたつかぬ、しとしととあるく。てっしてっしとふみつけてあるこうとすると」
*浄瑠璃・吉野都女楠〔1710頃か〕かちぢの御幸「藤井寺を弓手になし馬手(めて)へさらさらしとしとしと、かつしかつしとあゆませて」
(2)雨などがしめやかに降るさまを表わす語。
(3)ひどく湿っているさま、また、濡れているさまを表わす語。じとじと。
(4)ゆっくりと強く打つさまを表わす語。