丸山健二『千日の瑠璃 終結6』より四月四日「私は体臭だ」を読む
なかなか風呂に入らない少年世一。入浴という行為は、世間に馴染み上手くやり過ごすためのものとして捉えられている気がする。
そんな少年世一の体臭が語る。
体臭が語るにしては、以下引用文、まほろ町に春が訪れる風景は生き生きとしている。そのギャップが面白いし、大町にずっと住んでいる丸山先生だから書ける風景だと思う。
春一番に咲く
この上なく可憐な風媒花の受粉を一挙に促進させ、
薄汚れた残雪の下敷きになって褪せていた草を
若草らしい色に染め直し、
町じゅうの麦の作付面積を農夫よりも正しく把握している
揚げヒバリが陽炎の大地に降り注ぐ
かまびすしいさえずりといっしょになって
踊り狂うのだ。
(丸山健二『千日の瑠璃 終結6』205ページ)