さりはま書房徒然日誌2025年6月26日(木)

製本基礎講座32回「改装本 丸背1 データつけ・修理解体」

中板橋の手製本工房まるみず組の製本基礎講座32回。
これから「星の王子さま」を丸背の改装本に、丸背用スリップケースも作って、十二回かけて仕上げてゆく。
今日はそのためのデータの取り方、解体方法を教わる。

使用するのは岩波書店から刊行されている「星の王子さま」。

学生時代、フランス語の時間に「星の王子さま」を翻訳したりしたなあと懐かしく思い出しながら、本のサイズやページ数などデータを記入。

まずは見返し、「ごめんなさい」と詫びつつ本文を表紙から引き離す。だが、なかなか手強い。
先生が「製本はこの前見学に行った牧製本印刷」と奥付を示して教えてくださる。さすが広辞苑や六法全書の製本をされている会社の製本だけあって、簡単に解体できない。

↓奥付に製本会社の名前がない本が大半だが、この本はちゃんと「牧製本印刷」とある!

苦闘しつつ表紙を本文から引き離す。さらに表紙裏に貼ってあるボール紙を引き離して、表紙をただの紙の状態にしてから水で濡らして和紙を糊で貼り付けて裏打ち。↓

この表紙は改装本に大切に綴じ込む。

次に折丁をバラしていく。
牧製本印刷のすごい勢いで動いていた糸かがり機械を思い出しながら、それぞれの折丁の真ん中を開けて、かがってある糸をスパチュラで摘んでハサミでパチンと切る。それから、折丁を引き離す。


でも力が変なふうに入って少し「ビリビリ」と破れてしまう。とりあえず作業を続ける。
通りがかった先生は「ビリビリ」の部分に気がついて、微笑んで「糊でなんとかなるから」と慰めてくださる。


完成見本↓。表紙はマーブリングペーパーと皮。私の本もこんな風になるのだろうか?



ビリビリ解体して思ったけれど、私が製本するとヤワになるところは、とりわけ頑丈に製本されている気がした。製本会社はさすが!と思う。

それにしても丸背の上製本なんて、出版社も「星の王子さま」にはコストをあまり惜しまず本を作っているのだなあ。
図書館や子供、大人と幅広く購入される本だし、作者の著作権が切れているから著者への印税支払いの心配も要らないせいだろうか?


手製本を学んでから、本を手に取ったとき、出版社がコストをかけている本、かなり抑えている本、それぞれの事情やら思いやらを考えるようになった。
今のご時世、ほとんどの本が後者であるが。

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