丸山健二『千日の瑠璃 終結6』より四月二十三日「私は海だ」を読む
優しさのあるボート屋のおやじ。その波瀾万丈な生涯を簡潔に、読み手に想像させるような文。
無理がたたって妻をなくしてから、どんな思いでこの男はうたかた湖を眺めてきたのだろうか……と色々思う。
覇権を握るための
ただそれだけのための
爛れた戦争が
案の定
この上なく無様な終局を迎え、
時代がさらに険悪な様相を呈してくると
両人は流れる暮らしを始め、
流れ流れたあげくに
まほろ町へと漂着し、
ともあれ
湖畔に掘立小屋を建てて住み着いたのだ。
(丸山健二『千日の瑠璃 終結6』279頁)