丸山健二『千日の瑠璃 終結6」より「私は労働だ」を読む
まほろ町の人々の「霊肉をせっせと蝕む」労働が語る。
以下引用文。労働の本質というものを、漢字混じりの固い文でビシッと言い当てている気がする。
阻害者であり
暴圧者であり
独裁者でもある私は
単調と退屈を武器にしてかれらを日々責め立て、
勤惰いかんによって彼らを類別し
のみならず
この世における待遇まで決め、
僅かなことを聞き咎め
のべつ苦言を呈し
着意すべき点を徹底的に叩きこむ。
(丸山健二『千日の瑠璃 終結6』310ページ)
以下引用文に労働に翻弄される自分達の姿を見る思いがする。
それでいながらかれらは
私を拒否せず
しばしば私に泣きつき
私のために陰湿な謀を巡らせるようになり
多忙に取り紛れて生の本質を完全に見失い、
あげくに
私なしでは生きる意味も甲斐もなく
ために一日たりとも生きていられないと
本気で思いこむ始末だ。
(丸山健二『千日の瑠璃 終結6』311ページ)