さりはま書房徒然日誌2025年7月8日(火)

丸山健二『千日の瑠璃 終結6』より五月四日「私はひらめきだ」を読む

ストーブ作りの男が「青い流星がうたかた湖の面に映し出された一瞬に」得たひらめきが語る。

男の恋人である世一の姉は妊娠をしている。二人はなんとか生活を成り立たせようと色々考える。そのひらめきが語る。

「際限なく膨らんでゆくことはあっても 萎んだり 破裂したりすることはない。」とひらめきが己を語る言葉に、希望やらお腹にいる胎児の未来やらが重なってくる

風鈴を作ろうというひらめきも、風鈴そのものが希望にも、胎児が眠る子宮のようにも思えてくる。

将来の生活設計で頭がいっぱいの妊婦は
   ストーヴよりも単価が安いことを気にしながらも
      失敗した際の赤字が少なくて済むという理由から
         しぶしぶ同意し、

試してみる価値があるという結論の下
   私は彼らの子どものために
      際限なく膨らんでゆくことはあっても
         萎んだり
            破裂したりすることはない。


(丸山健二『千日の瑠璃 終結6』325ページ)

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