さりはま書房徒然日誌2025年7月9日(水)

丸山健二『千日の瑠璃 終結6』より五月五日「私は巨樹だ」を読む

以下引用文にずっと大町に暮らし、毎日庭の手入れをしている丸山先生だから、こんなふうに巨樹が見え、樹液が絶望のように感じられるのかもと思った。
巨樹と会話をしている世一の伯父は、もしかしたら丸山先生自身の思いを代弁しているのかもしれない。

荒れ野のど真ん中にでんと屹立して
   天心に輝く星を指し示す、

幹の傷口から樹液やら絶望やらを滲ませた
   孤高の巨樹だ。


(丸山健二『千日の瑠璃 終結6』326ページ)

「ほんとにこれでいいのか?」と
    彼は幾度も同じことを尋ね、

その都度私は
   「それでいいのだ」という同じ答えを繰り返し、

つまり
   錦鯉のほかに何も求める必要はなく、

さらには
   世帯を持つ必要もなければ
      子孫を残す必要もなく、

独りでこの地に耐え果てよという
   身も蓋もない結論だ。

(丸山健二『千日の瑠璃 終結6』328ページ)

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