さりはま書房徒然日誌2025年7月30日(水)

丸山健二『千日の瑠璃 終結6』より五月十五日「私は穴だ」を読む

崩れかけた土蔵に住む若者が、突然床下に掘り始めた穴が語る。

土蔵の床下を掘るという何となく不気味な行為も、その穴が「魂ごとつるっと呑みこみ」とか語ると、どこか現実離れしてくる。

この後に若者が感じる安らぎも、納得させるものがある。

そして六日目のきょう
   堂々たる骨盤を具えた健康な娘の子宮と比べても
      まったく遜色がない私は
         若者を魂ごとつるっと呑みこみ、

疲れきった五体を委ねた彼は
   手で触られるほど濃厚な闇に包まれて安堵し、

そもそもの始まりから間違っていた歳月の一部始終を
   地味豊穣なる土に吸わせてしまった。


(丸山健二『千日の瑠璃 終結6』367ページ)

さりはま について

更新情報はツィッター sarihama_xx で。
カテゴリー: さりはま書房徒然日誌 タグ: , パーマリンク

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

Time limit is exhausted. Please reload the CAPTCHA.