さりはま書房徒然日誌2025年8月24日(日)

丸山健二『千日の瑠璃 終結7』より五月二十八日「私は香水だ」を読む

まほろ町にやってきた「人相や背格好や浅ましい根性はそっくり」と書かれた女二人のつけている香水が語る。

その女たちの正体は……。

まほろ町のような田舎をリゾートにして儲けようと企んだ輩や、香水の強い香りが跋扈していた時代なのだなあと思いつつ読む。

全国制覇の壮図を抱く
   そんな野蛮な大企業の尖兵であるふたりは
      日没と同時に
         闇の色の高級車を駆ってまほろ町を訪れ、


(五月二十八日「私は香水だ」18ページ)

土地買収を目論む大企業が狙いをつける対象……というのは、いつの時代もそう変わっていないのかもしれない。

彼女たちが最初に狙いをつけるのは
   要らないと言った声の下から手を出すような
      あまりに露骨な連中か、

さもなければ
   食べてゆくだけが関の山といった
      貧しさに疲れきった者に限られ、

そうした戸別の微細な情報を漏らす
   役場の職員もまた
      この私に手玉に取られており、

要するに
   単純にして愚かな
      田舎者の典型だ。


(五月二十八日「私は香水だ」20ページ)

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