丸山健二『千日の瑠璃 終結7』より五月二十八日「私は香水だ」を読む
まほろ町にやってきた「人相や背格好や浅ましい根性はそっくり」と書かれた女二人のつけている香水が語る。
その女たちの正体は……。
まほろ町のような田舎をリゾートにして儲けようと企んだ輩や、香水の強い香りが跋扈していた時代なのだなあと思いつつ読む。
全国制覇の壮図を抱く
そんな野蛮な大企業の尖兵であるふたりは
日没と同時に
闇の色の高級車を駆ってまほろ町を訪れ、
(五月二十八日「私は香水だ」18ページ)
土地買収を目論む大企業が狙いをつける対象……というのは、いつの時代もそう変わっていないのかもしれない。
彼女たちが最初に狙いをつけるのは
要らないと言った声の下から手を出すような
あまりに露骨な連中か、
さもなければ
食べてゆくだけが関の山といった
貧しさに疲れきった者に限られ、
そうした戸別の微細な情報を漏らす
役場の職員もまた
この私に手玉に取られており、
要するに
単純にして愚かな
田舎者の典型だ。
(五月二十八日「私は香水だ」20ページ)