丸山健二『千日の瑠璃 終結7』より六月一日「私は時間だ」を読む
「時間」が語る人間の時間との関わり方。
過去、現在、未来……と人間にとって都合のいい関わり方を切り取って語っているように思える。
人間の勝手さを分析してみせるところに、冷静な視点を残して語る散文ならではの特徴を感じる。
ともかく私を忘れて
できれば自己自身さえも忘れてしまうことにあるようで、
ところが実際には
それとは逆の方向へ進んでしまっており、
ために
過ぎ去った私の幻なんぞに
いつまでも心を寄せたがり、
あるいは
まだ訪れぬ私の影に
怯えきっていて、
今現在の一瞬を
疎かに扱いつづける。
(丸山健二『千日の瑠璃 終結7』37ページ)