さりはま書房徒然日誌2025年8月29日(金)

丸山健二『千日の瑠璃 終結7』より六月六日「私は離婚だ」を読む

まほろ町にやってきた若いカップルは離婚してしまう。
彼らの住んでいた家に、世一の姉とその恋人がはいることになる。

ストーブ作りの男を「鉄の匂いがする男」と表現したり、図書館勤務の姉を「本の匂いがする女」と表現すると、平板さが消え去り、別の人間が見えてくる不思議さがある。

丸山作品は意外と所々ユーモラスな表現があって、「真っ先に私の気配を叩き出した」も現実を一瞬忘れさせてくれるユーモラスが感じられる表現である。

そしてきょう
   もうじき世帯を持つという
      いささか薹が立った
         鉄の匂いがする男と本の匂いがする女がやってきて
            まず真っ先に私の気配を叩き出した。


(丸山健二『千日の瑠璃 終結7』57ページ)

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