丸山健二『千日の瑠璃 終結7』より六月六日「私は離婚だ」を読む
まほろ町にやってきた若いカップルは離婚してしまう。
彼らの住んでいた家に、世一の姉とその恋人がはいることになる。
ストーブ作りの男を「鉄の匂いがする男」と表現したり、図書館勤務の姉を「本の匂いがする女」と表現すると、平板さが消え去り、別の人間が見えてくる不思議さがある。
丸山作品は意外と所々ユーモラスな表現があって、「真っ先に私の気配を叩き出した」も、現実を一瞬忘れさせてくれるユーモラスが感じられる表現である。
そしてきょう
もうじき世帯を持つという
いささか薹が立った
鉄の匂いがする男と本の匂いがする女がやってきて
まず真っ先に私の気配を叩き出した。
(丸山健二『千日の瑠璃 終結7』57ページ)