さりはま書房徒然日誌2025年9月22日(月)

丸山健二『千日の瑠璃 終結7』より六月十八日「私は弁当だ」を読む

手作りの弁当を貪る土木作業員。
その嬉しそうな様子を観察しながらも、丸山先生の視線はシビアである。

私はそんなかれらに
   酷使されて搾取されていることを束の間忘れさせ、


ついでに
   自慢の肉体が思い通りにならなくなる日が必ずや訪れる事実を

      現実から切り離し、

果ては
   死の宿命から遠ざけてやる。


(丸山健二『千日の瑠璃 終結7』102ページ)

ひとりものの作業員がパンを食べていると、仲間は早く結婚すればいいと勧める。

そう言われた独身青年の抱えるネガティブ感、虚無感。
どんな人の心にも巣食うこうした感情を見つける丸山先生。

そうした視点に自分と心分つ存在がいることに気がつき、救われる思いをする読者は少ないかもしれないが、確実にいるのだと思う。

自分はもう何も要らない
   自己自身ですら要らないくらいだから
      連れ合いなどまったく無用だ、


おのが命も要らなければ
   この世も要らず
      当然あの世も要らない。


(丸山健二『千日の瑠璃 終結7』105ページ)

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