さりはま書房徒然日誌2025年9月24日(水)

丸山健二『千日の瑠璃 終結7』より六月十九日「私は風鈴だ」を読む

世一の姉の婚約者・ストーブ作りの職人が収入を得るために始めた風鈴づくり。
評判はよくどんどん売れてゆく。
だが、ある時からパタっと売れなくなる。
その事情を分析するストーブ作りの男の目、すなわち丸山先生の目。
人間の心情の嫌なところをついているようだが、真実なのかもしれない。

だが世一のことを世間が知ると、また風鈴は売れるようになる。
人間とは何とも嫌な存在だと思う。

ほどなくして製作者は
   事情をすっかり理解し、

要するに
   客が気に入らなかったのは
      私そのものではなく
         私が呼びこむささやかな収入で、

あるいは
   私がもたらした世間並みの幸福のせいかもしれず、

これまで不幸の影を宿していた者が
   伸びる売り上げのせいで笑顔が戻ったことを
      単なる凡人の証しと受け止め、

そして
   嫉妬したのだ。


(丸山健二『千日の瑠璃 終結7』108ページ)

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